整形外科の特色と社会的ニーズ
「活躍が広く社会から求められている」診療科
整形外科は、運動器を構成するすべての組織、つまり骨、軟骨、筋、靱帯、神経の疾患・救急外傷を対象とします。厚生労働省の「平成19年度国民生活基礎調査」によると、腰痛・肩こり・手足の関節痛など運動器の症状がすべての症状の1~3位を占め、整形外科医の対象患者が如何に多いか分かります。
その原因疾患は、先天性発育異常、炎症、腫瘍、加齢による変性、スポーツ障害など多岐にわたり、新生児から成人、高齢者まで全ての年齢層が対象になります。救急医療の現場でも骨折や神経損傷など整形外科医の活躍が幅広く求められます。多くの基幹病院において新患患者数、外来患者数、入院患者数、手術件数などで整形外科の占める割合は大きく、医師派遣要請の最も多い診療科の一つと言えます。
つまり整形外科の特色を一言で言うなら、「その活躍が広く社会から求められている」診療科と言えます。
滋賀医科大学整形外科専門研修プログラムの目標と特徴
滋賀医科大学整形外科専門研修プログラムは到達目標を「総合的な運動器の診療を行える整形外科専門医」としています。2017年度からスタートした新専門医制度に先立ち、滋賀医科大学整形外科では、地域の研修指定病院と連携して、2013年より独自の後期研修プログラムを構築・運用してきました。その経験と実績により洗練された研修内容を提供します。
整形外科学は、運動器の機能と形態の維持・再建をめざす臨床医学であり、脊椎、上肢、下肢などの広範な診療領域を扱います。高齢化社会をむかえた我国においては、整形外科への期待はますます大きくなっています。
現在、滋賀医科大学整形外科には、上肢・肩・手外科、脊椎、股関節、膝関節、スポーツ整形、リウマチ、足の外科、小児整形外科、骨代謝(骨粗鬆症)、リハビリテーションなどの診療・研究グループがあります。
本プログラムの連携施設は、外傷外科(救急外傷)、小児整形外科、スポーツ整形、手外科、脊椎外科、関節外科、救急医療、リハビリテーションなどそれぞれに特色をもった13におよぶ施設、病院があり、機能的なローテーションにより、プライマリケアから最先端の臨床・研究までを学ぶことができます。
滋賀医科大学整形外科は、創設から45年(1977年4月1日創設)が経過し、整形外科全領域にわたる研究・教育・診療体制が整備されています。「総合的な運動器の診療科を目指して」を掲げる滋賀医科大学整形外科は、専攻医の皆様に素晴らしい研究環境を提供し、個々の能力を最大限に引き出す研修を目指します。
研修方法
参照資料:整形外科専門研修プログラム整備基準及び付属資料
(日本整形外科学会HP)
基本方針
滋賀医科大学医学部附属病院(基幹施設)および連携施設群において研修を行います。研修実績の記録と評価には、日本整形外科学会整形外科専門医管理システムを用います。
専攻医は、各研修領域終了時および研修施設移動時に日本整形外科学会が作成したカリキュラム成績表の自己評価欄に行動目標毎の自己評価を行います。また指導医評価表で指導体制、研修環境に対する評価を行います。
研修実績と評価をもとに、専門研修最終年度の3月に研修プログラム管理委員会において、専門研修修了判定を行います。このプログラムおよび専門研修プログラム管理委員会は、サイトビジットを含む第3者の評価・指導を受けます。
研修計画
整形外科の研修で経験すべき疾患・病態は、骨、軟骨、筋、靱帯、神経などの運動器官を形成するすべての組織の疾病・外傷・加齢変性です。また新生児、小児、学童から成人、高齢者まで全ての年齢層が対象となり、その内容は多様です。
この多様な疾患に対する専門技能を研修するために、整形外科専門研修は1ヶ月の研修を1単位とする単位制をとり、全カリキュラムを1.脊椎(6単位)、2.上肢・手(6単位)、3.下肢(6単位)、4.外傷(6単位)、5.リウマチ(3単位)、6.スポーツ(3単位)、7.小児(2単位)、8.腫瘍(2単位)、9.リハビリテーション(3単位)、10.地域医療(3単位)の10の研修領域に分割し、専攻医が基幹病院および連携病院をローテーションすることで、それぞれの領域で定められた修得単位数以上を修得し、流動の5単位を含めて、3年9か月間で45単位を修得します。
地域医療研修に関しては、本プログラムとは別の地域における整形外科診療や病院連携、病診連携を経験する事を目的に、人事交流がある他県にある連携病院で研修を行います。
-
専門知識・専門技能の習得計画
本研修プログラムでは、専門知識を領域毎に研修し、知識能習得状況を6ヵ月毎に評価します(自己評価および指導医評価)。専門研修プログラム管理委員会による専攻医面接を年1回行い、評価したデータをまとめた評価表を参照し、知識習得に関する目標設定・取得単位調整・指導を行います。 -
経験目標(経験すべき疾患・病態、診察・検査等、手術処置等)
経験すべき疾患・病態、診察・検査等、手術処置等は、整形外科専門医の受験資格に必要な症例数以上を滋賀医科大学医学部附属病院及び連携施設で偏りがないように経験することができます。 -
プログラム全体と連携施設によるカンファレンス
各研修施設の研修委員会の計画の下、症例検討や抄読会を行います。専攻医の知識・技能習得のためのセミナーを専門研修プログラム管理委員会が企画・開催します。 -
リサーチマインドの養成計画
全ての専攻医が自らの症例を用いて研究した成果を発表するカンファレンス「レジデントデイ」を年1回以上開催します。研究指導は各施設の指導医が行います。 -
学術活動に関する具体的目標とその指導体制(専攻医1人あたりの学会発表、論文等)
専攻医が学会発表年1回以上、また論文執筆を年1本以上行えるように指導します。専門研修プログラム管理委員会は全専攻医の学会発表数および論文執筆数を年1回集計し、面接時に指導・助言します。コアコンピテンシーの研修計画(医療倫理、医療安全、院内感染対策)
滋賀医科大学医学部附属病院および各研修施設の医療安全・医療安全講習会等に参加し、その参加状況を年1回専門研修プログラム管理委員会に報告します。さらに専攻医評価表を用いてフィードバックをすることによって基本的診療能力(コアコンピテンシー)を早期に獲得させます。地域医療に関する研修計画
本プログラムの研修施設群は医師不足地域中核病院を含みます。また、地域の特性上、地域医療に関する研修はほとんどの連携病院で行えると考えています。具体的な例を上げますと、
1. 病診・病院連携では、市立長浜病院、公立甲賀病院、淡海医療センター、滋賀県立総合病院、宇治徳洲会病院では院内に回復期リハビリテーション病棟を有し、整形外科患者が回復期に移行後、病診連携と在宅医療で在宅復帰を支援するところまで研修します。2. 地域包括ケアでは、淡海医療センター、近江八幡市立総合医療センターでは院内に地域包括ケア病棟を有し、回復期病棟に移行しない患者の病診連携と在宅医療から在宅支援までを研修します。3. 在宅医療では、上記1および2の病院群で特に在宅支援と在宅医療を研修します。4. 都市部の研修病院は大阪市の多根総合病院、枚方公済病院のみです。それ以外はすべて都市部以外での医療経験に相当します。サブスペシャルティ領域との連続性について
整形外科専門医のサブスペシャルティ領域として、日本脊椎脊髄病学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本手外科学会専門医があります。本プログラムの滋賀医科大学医学部附属病院および連携施設にはこれらサブスペシャルティ領域の研修施設が複数施設ずつ含まれています。整形外科専門研修期間からこれらのサブスペシャルティ領域の研修を行うことができ、専攻医のサブスペシャルティ領域の専門研修や学術活動を支援します。研修およびプログラムの評価計画
-
専攻医の評価時期と方法
専攻医および指導医は研修記録による研修実績評価を6ヵ月に1回程度行い、専門研修プログラム管理委員会に提出します。他職種も含めた滋賀医科大学医学部附属病院および各研修施設での研修評価(態度も含めた総評)を各施設での研修終了時に行います。専攻医は研修プログラムの取得単位、学会発表・論文執筆数、教育研修講演受講状況を年度末に専門研修プログラム管理委員会に提出し、専門研修プログラム管理委員会で評価します。上記の総評を専門研修プログラム管理委員会で年1回年度末に評価します。 -
専門研修プログラム管理委員会の運用計画
専門研修プログラム管理委員会は専門研修プログラム統括責任者を委員長とし、各連携施設の専門研修指導責任者を委員とします。滋賀医科大学整形外科学講座に専門研修管理事務局を置き、専門研修管理に係る財務・事務を行います。年2回の定期委員会を開催し、3月に専攻医4年次の修了判定委員会を行います。必要時に臨時委員会を開催します。専門研修プログラム管理委員会活動報告をまとめ、“滋賀医科大学整形外科専門研修プログラム管理委員会”に報告します。活動報告および研修プログラムは滋賀医科大学整形外科学講座のホームページで公開する予定です。 -
プログラムとしての FD (Faculty Development)の計画
指導医は整形外科専門研修プログラム整備基準の「整形外科指導医マニュアル」(日本整形外科学会ホームページ参照)に従って専攻医を指導します。指導医の指導技能向上のためのセミナーを専門研修プログラム管理委員会が企画・開催します。厚生労働省および日本整形外科学会主催の指導医講習会へ参加し、その参加状況を年1回専門研修プログラム管理委員会に報告します。 -
専門研修プログラムの改善方法
専門研修プログラム管理委員会で年1回検討し、必要に応じてプログラム改定を行います。
専攻医の就業環境の整備機能(労務管理)
専門研修プログラム管理委員会は、専攻医に対するアンケートと面接で各施設の就業環境を調査します。就業環境に改善が必要であると判断した場合には、当該施設の施設長、専門研修指導責任者に文書で通達・指導します。
整形外科研修の休止、中断、プログラムの移動、プログラム外研修の条件について
傷病、妊娠、出産、育児、その他やむを得ない理由がある場合の休止期間は合計6ヶ月間以内とします。限度を超えたときは、原則として少なくとも不足期間分を追加履修することとなります。
疾病の場合は診断書の、妊娠・出産の場合はそれを証明するものの添付が必要です。留学、診療実績のない大学院の期間は研修期間に組み入れることはできません。また研修の休止期間が6ヶ月を超えた場合には、専門医取得のための専門医試験受験が1年間遅れる場合もあります。
専門研修プログラムの移動に際しては、移動前・後のプログラム統括責任者及び整形外科領域の研修委員会の同意が必要です。
修了要件
-
各修得すべき領域分野に求められている必要単位を全て満たしていること
-
行動目標のすべての必修項目について目標を達成していること
-
臨床医として十分な適性が備わっていること
-
研修期間中に日本整形外科学会が主催又は認定する教育研修会を受講し、
所定の手続きにより30単位を修得していること -
1回以上の学会発表、また筆頭著者として1編以上の論文があること
以上①~⑤の修了認定基準をもとに、専攻研修4年目の3月に専門研修プログラム管理委員会において修了判定を行います。